言語聴覚士ってどんな職業?

みなさま、「言語聴覚士」って知ってますか??

私は幼少期からお世話になっていたので「言語聴覚士」の存在が医師や看護師のようにメジャーに感じていたのですが、いざ自分がなってみると「言語聴覚士」を知らない人が多く、衝撃を受けました。

専門学生のときに理学療法士や作業療法士と比較し人数が少ないことを学んでいましたが、想像していたよりも知られていませんでした。

また、「リハビリ」という言葉もなんとなく知っているけどよく知らない、という人が多いように感じました。

そこで、以下のことを目的に言語聴覚士について解説していきます。

  • 言語聴覚士を知らない人に知ってもらう
  • 言語聴覚士について理解を深める

言語聴覚士とは

言語聴覚士はSpeech Language Hearing Therapistと表記されSTと略します。

言語聴覚士は1997年に国家資格として制定され、言語聴覚士になるには国家試験に合格し厚生労働大臣から免許を受けなければなりません。毎年1千6百人から2千人程度が合格し、有資格者数は、2018年3月には3万人を超え、2023年3月には4万人近くになりました!!

ツキノ

同じリハビリスタッフである理学療法士はPT、作業療法士はOTと略されます。

言語聴覚士の専門分野

言語聴覚士は、「聞く」「話す」「食べる」の専門家です。

「聞く」「話す」には、言語、聴覚、発声・発音、認知など様々な機能が関係しています。

しかし、病気や交通事故、発達上の問題などの影響でその機能が損なわれ、コミュニケーションに問題を抱えてしまうことがあります。

コミュニケーションの問題は、失語症や高次脳機能障害、聴覚障害、ことばの発達の遅れ、声や発音の障害など多岐に渡り、小児から高齢者まで幅広く現れます。

言語聴覚士は、そのような問題を抱えている方々に対し、問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査や評価を実施し、訓練、指導、助言を行い、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。

また、食事や水分などがうまく食べられない・飲み込めない、「食べる」問題も専門的に対応します!

言語聴覚士のいるところ

特に就職先として多いのは病院です。

病院では、リハビリテーション科・脳外科・耳鼻科・神経内科・小児科・口腔外科など、幅広い科に在籍しています。

聾(ろう)学校や養護学校、児童相談所といった児童向けの施設や、一般の学校の特別支援学級で働く言語聴覚士もいます。

また、高齢者や認知症患者さまの増加に伴い、特別養護老人ホームやデイサービスセンターなどで働く言語聴覚士も多くなっています。

言語聴覚士の歴史

言語聴覚士の原点は欧州の耳鼻科領域から始まりました。日本は、欧州と併せて米国の影響を大きく受けながら発展していきました。

今回は欧州、米国、日本の3カ国に分けて解説します。

欧州

1821年 Helmhotzによる聴覚共鳴の定説

1847年 Bellによる視聴器やオージオメーターの発明

1854年 Garciaらによる咽頭鏡の発明と臨床応用

ツキノ

👆原点は耳鼻科領域でした。

1861年 Brocaらによる言語野の発見

1874年 Wernickeの失語症理論の発表

19世紀初頭 Gurzmannにより音声言語医学が体系化

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体系化とは、もともとバラバラだったものをひとつにまとめ、わかりやすくするという意味です。

また、1908年から米国が、1878年から日本が動き始めます。

1924年 Froschelsらにより国際音声言語医学会(IALP)設立

1930年 福祉施設、学校、病院で言語聴覚障害者に対する無償の言語治療サービスが開始

1988年 CPLOL(EUの言語聴覚士連合)がパリで設立

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CPLOLは、当時、欧州の19カ国21団体が参加し、その後対象が失語症や言語発達障害などの言語障害へ広がりました。

米国

1908年 最初の言語治療教室が開設(吃音・構音障害・音声障害・聴覚障害)

1920年 大学において専門家の養成が開始

1925年 ASHA(米国言語聴覚学会):アーシャーが結成

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大学や大学院における専門教科の講座の設置やASHA会員数の増加、研究、学会活動が活発化し、現在では世界最大の職能団体です。会員数は約145,000人です。臨床養成は大学院(博士)レベルで、生涯学習が免許の更新に必要です。

1939年 言語や騒音難聴が加わりリハビリテーション飛躍的活発化

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第二次世界大戦(1939年9月1日 – 1945年9月2日)による戦士リハビリテーションが背景にあります。

1970年 小児への関心が高まり、公立学校で言語、構音、聴覚の各障害に対応するセラピストを設置し増加。

日本

1878年 京都盲唖院開設

1903年 東京小石川に言語治療施設開設

1926年 東京深川の八名川尋常小学校に吃音学級設立

1930年 九州大学、東京大学にて音声言語障害の治療・研究部門設立

1956年 日本オージオロジー学会(日本聴覚医学会)発足

1956年 日本音声言語医学会発足

1958年 国立ろうあ者更生指導所(現:国立身体障害者リハビリテーションセンター)

1963年 日本リハビリテーション学会発足

1971年 大卒限定の聴能言語専門職員養成所(現:国立身体リハビリテーションセンター学院)の設立

1980年 高齢社会到来における福祉対策「ゴールドプラン」の策定

1983年 日本失語症学会成立(現:日本高次脳機能障害学会)

1985年 日本言語療法士協会設立(現:言語聴覚士)

1990年 4年制大学における専門家の養成が開始

1996年 日本摂食嚥下リハビリテーション学会設立

1997年 言語聴覚士法が設立

1998年 言語聴覚士法の施行

1999年 第一回言語聴覚士国家試験の施行

2000年 日本言語聴覚士協会の発足

2002年 社会保険診療報酬・言語聴覚療法Ⅰ・Ⅱ算定

2004年 日本言語聴覚士学会設置・生涯学習プログラム開始

2006年 介護保険訪問リハビリテーションにST位置づけ

2008年 認定言語聴覚士制度開始

2009年 東京都言語聴覚士協会の発足

2013年 日本吃音・流暢性障害学会設立

ツキノ

資格の種類については別の記事にまとめているのでぜひ御覧ください。

さいごに

言語聴覚士は、病気やケガ、後遺症や障害を持つ方が社会復帰を目指すために行うリハビリテーション・ハビリテーションを通じて、一人ひとりに寄り添い、適切なサポートを行っていきます。

資格を取得し働き始めてからも、臨床の場で経験を積んで専門性を高めたり、他分野の知識を学んで視野を広げたりしながら、自らを成長させていく職業です。

私自身も引き続き精進してまいりますのでよろしくお願いします。