動作が拙劣…それは失行かも

今までできた動作が下手になった…

脳卒中を経験した方の、その状況、失行かもしれません。

「疲れてるから」「もともと下手だった」と心に蓋をせずに、専門家にご相談していただけると嬉しいです。また、言語聴覚士やリハビリスタッフは、適切な訓練を提供しましょう。

今回の記事では、失行について理解を深め、今後に活かしていただけますと幸いです!

失行とは

失行とは、麻痺、失調、感覚障害がないにもかかわらず、習熟した行為・動作を意図的に行うことができない病態のことです。

失語や知能低下による動作・行為の理解障害が直接の原因ではありません。

また、意図的にはできない動作・行為でも自然な状態で自動的には行える場合があるという、自動性と意図性の乖離がみられます。ただし、同じ動作でもいつでもできないとは限りません。

失行の種類とその病態・病巣

肢節運動失行(拙劣症)

大脳病変の反対側の手の習熟動作が拙劣・緩慢な状態のことです。

病巣は中心溝の前後の領域です。

ツキノ

具体的には、本のページがめくれない、硬貨が拾えない、などがあります。



観念失行(使用失行)

使用巣べき対象物の認知は保たれ、また運動能力にも異常が内にも関わらず正しく物品を操作できない状態のことです。

両手に道具の使用障害をきたす病態です。

道具を実際に持ってから(握ってから)の障害です。

病巣は、左半球頭頂葉です。



観念運動失行

売買や敬礼などの動作、ジェスチャーが難しくなる状態です。

道具に見合った使用法ではなく、別の道具を使うような動作(意味性の錯行為)が生じたり、系列運動の順番を誤ったり、運動の一部が脱落したりします。

運動の企画イメージの障害であると言われています。また、自動性と意図性の乖離がみられます。

病巣は、左半球頭頂葉です。



着衣失行

着衣の行為が拙劣になっている状態です。

他の失行や半側空間無視などが重なっている状態である可能性もあります。

病巣は、右半球頭頂葉、右半球上頭頂小葉です。



拮抗失行

「意図された行動と実際に行われた行動の抗争」現象です。

右手が意図に従い動作を開始すると左手が反対の動作または無関係な動作で妨害します。

患者は「左手が思うように動かない」と訴え、右手を使って対処しようとしていると説明することがあります。

左手の異常行動には以下が挙げられます。

  • 右手と同一の異常行動
  • 右手とは反対目的の異常行動
  • 左手が意図通りに動かない異常行動
  • 左手が十分に動かない異常行動


左手の失行

脳梁離断によって生じる自分の意思や言語命令に左手で応じることができない状態のことです。

左半球で理解した言語命令が右脳に伝わらないことで起きます。

口部顔面失行(口腔顔面失行・口舌顔面失行)

ブローカー失語、全失語、伝導失語、ウェルニッケ失語に併発することがあります。

病巣は、左半球シルビウス溝周辺の上半部、中心前回、縁上回皮質下、島、弓状束などです。

「咳払いをしてください」と指示すると音声で「ごほん」という言語化がみられる。

ツキノ

簡単なスクリーニング検査としては、「口を大きく開けてください」、「舌を出してください」「舌打ちをしてください」と指示し、動作の困難さやぎこちなさ、行為の誤りがないか、言語化がないかを確認します。



まとめ

以上、「動作が拙劣・・・それは失行かも」でした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。