同名性半盲と半側空間無視の鑑別のコツ

半側空間無視は臨床上よく経験する症状の1つだと思います。その症状と類似点がみられる代表的な症状として同名性半盲があります。

  • 同名性半盲と半側空間無視の違いをうまく説明できない
  • 臨床の中で経験することがあまりなかった

今回は、そのような思いのある方に向けて、それぞれの症状と鑑別のコツを解説していきます。

半側空間無視とは

半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)とは、大脳半球の損傷側と反対側にある刺激を発見して反応したり、その方向を向いたりすること(定位)が障害される病態です。頭部の固定や視線の動きが制限されない状態でも生じる空間性(方向性)注意障害です。

原因と病巣

慢性期まで持続し、かつ重症であるのは右半球損傷後の左半側空間無視で、右半球の側頭ー頭頂結合部(下頭頂小葉)が重視され、右半球損傷であればどこでも生じる可能性があります。また、左右どちらの半球の損傷によっても生じる可能性があります。

読字・書字に現れる症状

無視性失読:横書き文書の行頭の文字を見落とします。

空間性失書:紙面の左側を使用せず右側のみに文字を書いたり、行を水平に保てない、文字の構成部分の脱落、重複、付加、離解がみられます。

過程別タイプ分類

知覚(認知)過程に無視が生じるタイプ

頭頂葉損傷にみられ、感覚・表像的側面に無視症状が強いタイプ。

線分二等分線に困難みられる。

動作遂行過程に無視が生じるタイプ

前頭葉損傷(無視は軽度)にみられ、運動探索の側面に無視症状が強いタイプ。

抹消課題困難みられる。

座標別タイプ分類

身体の中心の座標系:対象の位置が体から左に離れるほど見落としが多くなるタイプ。

刺激中心の座標系:認識した対象の中で、その対象の左半分を見落とすタイプ。

合併しやすい病態

  • 自分の状態への無関心または病識低下
  • 右半球損傷に由来する特有の態度(楽観的、性急、表面的、無関心、無反応 等)を示す
  • プッシャー症候群
  • パーソナルネグレクト:指示に応じて自己身体の左側を触ったりすることができない状態

同名性半盲とは

同名性半盲とは両眼の同じ側の部分が見えなくなる病態です。

原因と病巣

視覚の通り道である視路が障害されることにより生じます。また、左右どちらの半球の損傷によっても生じる可能性があります。

人が物を眼で見るとき、下図の通り正面よりも右側の物は右眼・左眼それぞれの左側の網膜神経節細胞(図の青色)に照射します。左眼の視路は同側の左後頭葉に到着します。右眼の視路も途中でクロスして(視交叉)、左眼の視路と合流し、左後頭葉に到着します。

視交叉より後方の左半球の視路の障害では両眼の右側(図の青色)が見えなくなり、右半球の視路の障害では両眼の左側(図の赤色)が見えなくなります。これを同名性半盲といいます。

症状

右目、左目の視野の半分が見えなくなります。自覚ががあり「右側が見えない」「左側が見えない」と訴えがみられます。

同名性半盲と半側空間無視の鑑別

同名性半盲半側空間無視
・視野障害
・同名:左右のどちらか一方の視野が
    同時に障害されている状態のこと

<病巣>
視索から後頭葉の一次視覚野までの経路

・患者は半盲の自覚がある
・患者は見えないことを代償しようとする
・障害は視覚に限定される
・視覚認知に関する高次脳機能障害
 =注意障害
 =視野障害の有無を問わない

<病巣>
右半球障害による左半側空間無視が最も多い

・患者に病識がない
・視野以外の感覚情報においても
 同側に対し注意が向かないことがある

まとめ

以上、「同名性半盲と半側空間無視の鑑別のコツ」でした。

同名性半盲と半側空間無視は、混在している可能性もあるため注意が必要です!