赤ちゃん言葉が抜けない?それって構音障害かも

「言い間違いが多い…」

「聞き取りにくい…」

「子どものことばの発音が気になる…」

それの原因は、構音障害かもしれません。

今回は、子どもの構音障害についてお話していきます。

子どもはひとりひとり成長の速さに違いがあるため、目安としてご確認いただけますと幸いです。

赤ちゃん言葉っていつまで?

言い間違いや「さ行」や「ら行」がうまく発音できない等は、未熟構音と呼ばれ、言葉の成長過程において多くの子にみらるものです。そして、 ほとんどは5歳頃に自然に治ります

しかし、小学校に入る直前やそれ以降も幼児構音が続く場合は、構音障害の可能性があります。

構音障害とは

言語障害の1つで、概ね一般的に獲得すると言われている年齢を過ぎても特定の音を誤って発音することが持続されている状態を指します。

構音発達の順序

体の成長や脳の発達とともに、簡単な構音からより複雑な構音ができるようになっていきます。以下は構音完成年齢の一覧です。諸説ありますので、目安としてご確認ください。

年齢完成する構音
2歳代パ行、バ行、マ行、ヤユヨワン、母音
3歳代タ行、ダ行、ナ行、ガ行、チャ行
4歳代カ行、ハ行
5歳代サ行、ザ行、ラ行

構音障害の種類

機能性構音障害

発生発語器官に器質的な異常がないにも関わらず生じる構音障害を指します。

主に幼児期にみられ、自然治癒が望めない場合は、早期に指導・訓練を受けることで改善する可能性が広がります。

<以下の異常が認められない場合を指します>

  • 発生発語器官の神経系の損傷による運動障害
  • 発生発語器官の形態異常
  • 聴覚障害

要因

■ 運動学的要因(構音器官の随意運動能力)

構音器官の随意運動能力に困難さがみられることです。「舌を平らにして維持する」ことや「舌を上顎歯茎に接触させる」ことなどが難しいです。

■ 言語学的要因(音韻障害)

音韻意識が低くことばの意味だけでなく音に注意を向けることができず、話す際に音を誤ることです。以下、音韻意識の完成年齢をまとめたものを記載します。諸説ありますので、目安としてご確認ください。

年齢可能になること
4歳後半音韻分析
5歳前半
5歳後半
語中音抽出
しりとり・2モーラ(2文字)の逆唱
6歳モーラ削除・3モーラの逆唱
7歳4モーラの逆唱
■ その他
  • 語音弁別能力
  • 遺伝的要因
  • 環境要因 など

器質性構音障害

発生発語器官の形態異常がもたらす構音障害です。構音器官の形態や機能の異常に起因します。鼻咽腔閉鎖不全症や口腔腫瘍等による発語器官の切除後に生じるものなどもあります。

要因

先天性後天性
口唇口唇裂
先天性鼻咽腔閉鎖機能不全
口唇の外傷
術後の瘢痕拘縮
下顎第一第二鰓弓症候群
下顎前突出症
手術による変形
外傷
口蓋口蓋裂
高口蓋
短軟口蓋
幅の狭い口蓋
手術による変形・欠損
小舌症
巨舌症
舌小帯短縮症
下顎前突出症
瘻孔
手術による変形・欠損

運動性構音障害(ディサースリア)

中枢から末梢にいたる神経・筋系のいずれかの病変による運動器官の運動障害で起きる構音障害です。

原因疾患として以下が挙げられます。

  • 神経疾患:脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症、他
  • 神経筋疾患:重症筋無力症
  • 筋疾患:進行性筋ジストロフィー

聴覚性構音障害(二次障害)

聴覚の障害により、正しい構音を獲得することが難しい場合を、聴覚性構音障害という場合があります。

音の誤り方の種類

誤って構音された音の聞こえ方によって大きく3つに分けられます。

省略

語音の音素が省略されて母音部分のみになっているものを指します。正常の構音発達の途中の一時期にみられます。

てれび(/terebi/)→てえび(/teebi/): /r/の省略

はっぱ(/happa/)→あっぱ(/appa/):/h/の省略

置換

ある音が他の音に置き換わっているものを指します。

コップ(/koppu/)→あっぱ(/toppu/):/k/の/t/への置換(t/k)

歪み

日本語の語音として表記できない音に歪んでいるものを指します。

  • 構音操作が不十分なために音が弱くなって歪み音になるもの
  • 鼻咽腔閉鎖機能不全のために構音時に呼気が鼻腔に漏れてしまい、音の弱音化や鼻音化が起こって歪み音になるもの        
  • 構音操作が正常と異なるために歪み音になるもの⇒「異常構音

異常構音

ことばを発するときに使用される音は、人によって産生方法に個人差があります。しかし、同じ音韻体系を持つ集団の中で多くの人とは異なる産生方法をされた音は、何か違和感を感じさせられる音として聞こえます。これを異常構音と言います。

異常構音の種類

促音化構音

高温時、舌が口腔外のほぼ全面に接し、舌縁と臼歯付近で産生される音です。「イ列音」に多く出現し、独特な歪み音、摩擦性の雑音を伴います。舌、口角、下顎の変異がみられたり、歯列不正との関連が示唆されています。鼻息鏡で子機の側方流出を観察することができ、呼気流出側の頬を抑えると音が出なくなります。

鼻咽腔構音

舌が挙上し、口蓋に接し、口腔への呼気を止め、軟口蓋と咽頭後壁との狭め、または閉鎖・開放によって産生される音です。原因として、構音運動の巧緻性の低さ、口腔咽頭形態との関係が示唆されています。呼気はすべて鼻孔から出ます。「イ列音」「ウ列音」に多く出現し、「ン」「クン」に近い歪み音に聞こえます。鼻孔を閉鎖すると音が出ません。また、全ての音で診られる場合は鼻咽腔閉鎖不全である可能性が高いため注意しましょう。

口蓋化構音

歯茎音の構音位置が口蓋に移行し、舌の中央部と口蓋後方の閉鎖、狭めによって産生される音です。/s, ∫, ts, dz, t, d, n, r/に出現し、「カ行音」「ガ行音」に近い歪み音に聞こえます。原因として、口蓋の形態異常が示唆されています。口蓋裂の場合は、歯列・咬合不正により起きる可能性があります。舌尖で口角や上口唇を舐めることができない、舌打ちができないなど、舌の巧緻性の問題がみられる場合もあります。

声門破裂音

正常構音における構音動作は認められず、声帯や仮声帯を強く閉鎖し、急激に開放することによって産生される破裂音です。無声破裂音、破裂音に多く出現し、母音を強く区切って発生した音に聞こえます。原因として、鼻咽腔閉鎖不全が挙げられることが多く、その倍は、鼻咽腔閉鎖不全改善後に構音訓練を実施します。

咽頭摩擦音

舌根と咽頭壁の狭め、閉鎖・開放によって産生される摩擦音です。/s, ∫, ts, t∫/に多く出現し、喉の奥から絞り出されるようなささやき声に聞こえます。原因として、鼻咽腔閉鎖不全が挙げられることが多く、その倍は、鼻咽腔閉鎖不全改善後に構音訓練を実施します。

咽頭破裂音

舌が後方にひかれ、舌根部と咽頭後壁で産生される破裂音です。「カ行音」「ガ行音」に多く出現し、喉に力を入れて強く発したような音に聞こえます。原因として、鼻咽腔閉鎖不全が挙げられることが多く、その倍は、鼻咽腔閉鎖不全改善後に構音訓練を実施します。

まとめ

以上、「赤ちゃん言葉が抜けない?それって構音障害かも。」でした。

音の誤りや不明瞭さの原因はひとりひとり異なるため、適切なアドバイスや治療、指導を受けることが大切です。

もし気になる場合は、専門機関に相談し、専門家のサポートを受けましょう。