病識がない…それは病気のせいかもしれません。

  • 目の前のものの名前が知っているはずなのに言えない
  • 「〒」が何のマークかわからない
  • 人の顔が区別できない
  • 病識がなく通院やリハビリに協力いただけない

など、脳卒中や脳外傷後、認知に何か違和感がみられたら、それは失認のせいかもしれません。

失認とは

視覚、聴覚、触覚などの感覚障害がないにもかかわらず、対象が何であるかを認知できない病態です。

要素的感覚、知能の低下、注意機能障害、失語症による呼称障害、刺激に対する知識の無さ以外の特定の感覚種に限った対象認知の障害です。

視覚失認

知っているはずの対象物を見ても、それが何なのか認識できない病態です。

視覚失認は以下の通り3種類の型に分けられます。

統覚型視覚失認

両側の一次視覚皮質や二次視覚皮質の脳細胞が破壊され、視覚の腹側経路が選択的に障害されることにより、形態の認識に異常がでている状態です。

背側経路は保たれるため、動きや意識に上らない形の認識はできます。

ツキノ

ぼやっと見えるけど模写はできない状態です。

意識的には形がわからないのに見た物の形に合わせて無意識的に手の形を変えて正しく掴むことができます。

統合型視覚失認

部分的な形を全体的な形と関係付けることが難しい状態です。

模写はできるが各部分をバラバラに写し取るようにゆっくりと描きます。

見せる時間を短くする、視覚的な雑音(錯綜図)を加えると更に分かりづらくなります。

連合型視覚失認

腹側経路に存在する、見た物品の意味に関連付ける機能が損傷するため、見えたものが意味に結びつかない状態です。

画像失認

象徴記号(温泉マークや郵便局のマークなど)、略画、状況画、写真などの2次元の画像の認識ができない病態です。

形態認知障害を物体、画像、相貌の3者に分類したときの画像認知の障害

Hecaen,1972

検査は、錯綜図を用いたり、絵を断片化したり、絵に余計な線を加えたりして検出を行います。ごく普通の画像の認識障害では、視覚失認の影に症状が隠れて検出が困難なことが多いです。

相貌失認

顔ということはわかっているが、個人の特定や区別ができない病態です。

原因は脳梗塞が最も多いですが、脳挫傷でも出現することがあります。

病巣は、右あるいは両側の後頭葉から側頭葉にかけて(視覚の腹側経路)の損傷が挙げられます。右側一側損傷の場合はしばしば一過性であることがあります。1年以上持続例では、後頭葉病変が内側部の下縦束や脳梁の一部に及んでいることがあります。

相貌失認は以下の2種類に分けられています。

統覚型相貌失認

良く知っている個人を特定できない状態のことです。

異同、老若、男女、美醜などを区別できません。人であること、顔であることはわかっています。

連合型相貌失認

良く知っている個人の特定はできませんが、異同、老若、男女、美醜などを区別できるます。

街並失認

「街並(建物・風景)」という視覚対象に対する病態です。

良く知っているはずの周りの風景が初めて見るように感じます。また、病巣となる箇所が近いため、相貌失認と合併して生じることが多いことが特徴です。病巣は、右半球の側頭ー後頭葉内側下面(舌状回、紡錘状回、ときに海馬傍回)です。

道順障害との鑑別は以下の通りです。

街並失認道順障害
熟知した街並みの同定不可
建物の形態の認知・識別
建物の外観の想起可or不可
自宅の見取り図可or不可
病院の見取り図可or不可不可
熟知した地域内での建物の一の想起不可
熟知した地域内での2点間の道順想起不可

触覚失認

狭義では、体性感が保たれているにも関わらず手で触ったものが何であるか認知できない状態のことを指します。

一次性認知障害(統覚型触覚失認)

触っている感覚がわからない状態です。重量、粗滑、硬柔、材質などが認知できない素材失認や、平面および立体形態の把握が難しくなる形態失認が影響していて、手で触ったものの物品の素材、形態の口述や異同弁別、マッチングが障害され呼称も困難です。病巣は、左縁上回ー角回の一部、左中心後回、後方頭頂皮質で、右手触覚失認が生じることになります。

二次性認知障害(連合型触覚失認)

素材や形態の弁別は保たれるが、対象物の認知ができない状態です。触覚性失象徴、純粋立体失認とも呼ばれます。病巣は、角回皮質・皮質下および頭頂葉、縁状回、右頭頂葉深部白質です。

聴覚失認

聴力に著しい障害がないにもかかわらず、聴覚的に認知できなくなる病態です。

語音は音として聞こえるが音韻として認識することが難しくなります。

病巣は、内側膝状体ー聴放線ー聴覚野です。

ツキノ

その他、聴覚に関連するものとしては、環境音失認や失音楽症なども挙げられます。

病態失認

明らかな病的状態があるにも関わらず、自身の病的な状態を正しく理解できない病態です。

明確な意識障害はない状態で起こることを指します。

まとめ

以上、「病識がない…それは病気のせいかもしれません。」でした。

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