STが最低限押さえておくべき脳の解剖生理と12神経の覚え方

臨床の中で基本に立ち返って考えることや、予測しながら検査していくことを求められることが多いと思います。

この記事では、その際に言語聴覚士として最低限理解しておくべき脳の解剖生理と12神経についてお伝えします。

脳って?

脳は、大脳(終脳+間脳)脳幹(中脳+橋+延髄)小脳からなります。

脳は、部位によって役割が異なっています。

すべてのほ乳類動物は脳組織を持っていますが、人間は前頭葉が発達しているのが特徴です。

ツキノ

ちなみに、魚類、両生類、爬虫類は、反射や、摂食、交尾のような本能的な行動をつかさどる脳幹が脳の大部分を占めていて、大脳には、生きていくために必要な本能や感情をつかさどる大脳辺縁系しかない。鳥類や哺乳類は、小脳と大脳が大きくなり、特に大脳が発達し、感覚野や運動野が出現するよ。

大脳

大脳は、終脳(前頭葉+頭頂葉+後頭葉+側頭葉)と間脳からなります。

前頭葉

前頭葉は主に以下の働きをしています。

  1. 運動機能
  2. 精神機能
  3. 運動性言語機能

第一次運動野

随意運動を支配しています。障害されると、意思通りの運動である随意運動ができなくなります。

第二次運動野

不随意運動(錐体外路)の中枢です。障害されると、意識に上がらない運動である不随意運動や筋緊張の異常が生じ、結果として随意運動をスムーズに行えなくなります。

ブローカ野

運動性言語機能の中枢です。障害されると、相手の言うことは比較的理解できますが、流暢に話せなくなる失語症を呈すことが多いです。

前頭眼野

眼球の随意的な共同運動を行います。特に、目で動くものを追う運動に働きます。障害されると、反対側に視線を向けられなくなります。

頭頂葉

様々な感覚の中枢で、感覚領野である一次体性感覚野が司ります。聴覚や嗅覚などの特殊体性感覚中枢の他、記憶の中枢と感覚性言語中枢が存在し、辺縁系の一部も構成しています。右側頭頂葉が障害されると空間失認が起きます。

側頭葉

聴覚、味覚、嗅覚などの特殊体性感覚中枢の他に、感覚性言語中枢(ウェルニッケ野)、記憶中枢(海馬)が位置しています。感覚中枢は外側溝に接するへシュル横回にあり、障害されると聴覚失認、幻聴などが起きます。嗅覚中枢は側頭葉下面内側の鉤回にあり、障害されると不快な匂いを感じます。

後頭葉

視覚の中枢は後頭葉内側面、鳥距溝を挟むように存在します。視覚刺激により対象物に反射的に視線を送る眼球運動の中枢があります。頭蓋内で最後方に位置し、大脳と小脳を仕切る小脳テントに接しています。一次視野には特徴的な縞模様の線条皮質であるジュンナリ線条がみられます。

間脳

間脳は、視床、視床下部、松果体からなります。嗅覚を省き感覚伝導路として大脳皮質に多くの線維で結ばれています。 自律神経の働きを調節、意識・神経活動の中枢をなしています。

視床

第3脳室に接していて、その外側には内包、上下には尾状核、脳弓、側脳室、下方には、視床下部が連なります。両側の視床は視床間橋により左右が連結されます。働き、特徴は以下の通りです。

  1. 脳幹網様体からの連絡を受け、脳皮質を目覚めさせておく
  2. 嗅覚以外の全ての感覚が視床を通る中継路として働く
  3. 最も進化した動物にみられる部位で、大脳皮質、連合料や視床下部と往復する連絡線維が集まる

視床下部

視床の下方に連なる第3脳室の前方株い位置します。

さらにその下方には脳下垂体が連絡しています。この下垂体をコントロールすることで内分泌機能の中枢でもあります。

障害されると、水分代謝異常、体温調節異常、性器発達異常、電解質異常などの自律神経機能の調整不良が起き、生体のホメオスタシスに関与します。

ツキノ

ホメオスタシス(生体恒常性)とは、身体の外から受ける環境や内部の変化にかかわらず、身体の状態(体温・血糖・免疫)を一定に保つことを指します。

脳幹(中脳+橋+延髄)

内部を大脳や小脳に行き来する情報が走行し、大脳神経のほぼ全てが含まれます。脳幹障害に共通する特徴として、患側の脳神経麻痺+反対側の片麻痺という組み合わせで症状を生じます。

中脳

間脳と橋に挟まれた領域で、前方には大脳脚が位置します。大脳脚には随意運動伝導路である錐体路の線維がまとまって走行しています。後方に存在する黒質は不随意運動の神経中枢である錐体外路の細胞が集合した核です。

ツキノ

核とは、同じ働きをするものが集まったもの、を指すよ!

黒質の背側部には被殻があります。この中には様々な連絡線維が上下に走行していて、赤核、動眼神経核、滑車神経核、三叉神経中枢器核などが含まれます。

ツキノ

赤核は、黒質同様、錐体外路系の細胞の集合核だよ!

中脳と延髄の間に位置しています。橋の後壁は第4脳室の基底部を構成していて、後方には小脳があります。橋と小脳は中小脳脚で連絡して、橋にも様々な連絡線維と脳神経が含まれます。

延髄

大後頭孔を通り脊髄と連絡しています。呼吸、嚥下、循環、嘔吐の中枢が存在し、生命維持に不可欠な部位です。延髄下方で膵体部の線維と徐々に交叉し、これを錐体交叉と呼びます。これらの線維は反対側の脊髄側索に至ります。

小脳

運動と姿勢に関わっており、脊髄よりも上位にある運動中枢の一つです。共同的な運動を行う際に筋活動、特に熟練した運動を調整し統御します。大脳基底核は主に遅い安定した運動を行うことに関わっているのに対し、小脳は主に速い運動を調整しています。姿勢においても重要な働きをしています。

前庭小脳

内耳にある前庭器です。平衡覚の入力を受け、身体の平衡を保つ。障害されると、めまい、歩行困難が生じます。

脊髄小脳

脊髄を上行してきた深部感覚の入力を受け、四肢や体感の筋緊張を調整し、姿勢の維持に働きます。障害されると運動障害が生じます。

橋小脳

小脳半球に相当します。大脳皮質から連絡を受け取り、橋を介して大脳皮質の特に運動屋から入力を受け、運動の円滑化に重要な役割を担います。障害されると筋緊張の低下を生じます。

12神経の詳細

脳神経は、大脳または脳幹から直接伸びている末梢神経で、12対あります

脳神経名起始機能支配または分布領域
嗅神経間脳感 覚:嗅覚の伝導
視神経間脳感 覚:視覚の伝導
動眼神経中脳運 動:上眼瞼、眼球運動

副交感:瞳孔縮小、水晶体の厚さ調節
上眼瞼挙筋、上直筋、下直筋、
内側直筋、下斜角筋

瞳孔括約筋、毛様体筋
滑車神経中脳運 動:眼球運動上斜筋
三叉神経感 覚:顔面と前頭部の皮膚感覚、
    舌前2/3知覚、
    鼻腔、口腔粘膜の感覚伝導
運 動:咀嚼筋の運動
第1枝〜第3枝
顔面の皮膚、鼻腔口腔の粘膜


咀嚼筋
外転神経運 動:眼球運動外側直筋
顔面神経運 動:表情筋の運動
感 覚:嗅覚の伝導
副交換:唾液分泌
表情筋
舌前方2/3
顎下腺、舌下腺
内耳神経感 覚:聴覚・平衡感覚の伝導
舌咽神経延髄感 覚:味覚の伝導
運 動:嚥下運動に関与
副交換:唾液分泌
舌後方1/3、喉頭
咽頭筋(茎突、耳管)
耳下腺
迷走神経延髄感 覚:咽頭・喉頭粘膜の感覚
運 動:嚥下・発声
副交換:胸腹部の内臓感覚の伝導
咽頭、喉頭、胸腹部
咽頭、喉頭の筋肉
胸腹部の内蔵
副神経延髄運 動:頸の運動胸鎖乳突筋、僧帽筋
舌下神経延髄運 動:舌の運動舌筋
ツキノ

橋を起始としている神経は、大脳に行かずに司令を出す「反射」だよ!

覚え方(語呂合わせ)

私は、今でこそ自然に出てきますが、学生のときは語呂合わせで覚えるようにしていました。その語呂をお伝えします。参考までにご活用ください。

嗅神経(嗅いで)  
視神経(みる)
動眼神経(動いて) 
滑車神経(すべって)
三叉神経(3)   
外転神経(回転)
顔面神経(イケメン)
内耳神経(寺)
舌咽神経(院)
迷走神経(走って)
副神経(ふく)
舌下神経(ぜ)

まとめ

以上、「STが最低限押さえておくべき脳の解剖生理と12神経の覚え方」でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。