STが最低限押さえておくべき言語学の知識

言語聴覚士の名前の中にも含まれている「言語」。

臨床では、言語障害を呈している患者さまとの関わりの中で意識することが多い項目を中心に解説していきます。

「ことば」とは

コミュニケーションシステムの1つで、送り手と受けての間で特定の信号コードを用いた情報の中で用いられるものです。また、コミュニケーションシステムには、話し言葉、書き言葉、手話などの言語形式(Verbal)と、パラ言語、ボディランゲージなどの非言語形式(non-Verbal)があります。

【パラ言語】

リズム、抑揚、イントネーション、ポーズ、声質、発話速度、アクセントなど

【ボディランゲージ】

目の動き、ジェスチャー、表情、体の動きなど



コミュニケーションにおいて、言語情報より、視覚情報や聴覚情報である非言語情報のほうが相手に大きな影響を与える、というメラビアンの法則は有名ですね!



言語の構成要素

言語には4つの構成要素があります。

ことばの遅れのあるお子さまや失語症を呈している患者さまにとって、どの段階が苦手となっているのかを探るときに意識すると症状を整理しやすくなります。

  1. 語彙(ことばを理解できる・言える)
  2. 統語(ことばを文章で使える)
  3. 音韻(1音ずつ音を理解できる)
  4. 語用(含まれている意味を理解できる)

言語の特性

言語にはいくつかの特性があります。ここでは代表的なものをピックアップしてお伝えします。

転位性:人間のことばは、発話時(現在)や話し手の事実を超えた内容を持てること。

創造性・生産性:ことばは常に新しいことを表現し、同時に聞き手や読み手にもそれが理解できること。

恣意性:言語で伝えようとする内容と、それを示す記号との間には必然的な関係が何もみられず、勝手気ままに結びつけられること。

有契性:恣意性に含まれない、例外のこと。語と記号の間に結びつきがあること。

二重文節性:「文」は「語」という意味を持った単位に分節することができ、「語」は「音」という意味を持たない単位に分節できる、という、情報性あるいは思考上の単位を二重の下位単位に分節できるということ。

階層性:小さい単位から大きい単位に階層になっていること。

線状性:音や単語が一次元に配列されること。

反復性:文をより大きい文の構成要素として限りなく繰り返し組み込めること。

構造依存性:名詞句や動詞句などの構成要素に関わる概念で組み立てられていて、数字的な数の概念には依存していないこと。



ソシュール言語学

フェルディナン・ド・ソシュール(1857-1913)が『一般言語学講義』(1916)にて言語活動のことをランガージュと呼びました。そして社会的に共有されている知識や能力、規則のことを社会的側面とし「ラング」、それぞれの人々が話すことを個人的側面とし「パロール」としました。そして、ラングを共時的に研究すべきであると説きました。

音声言語の種類

音声

人間が思想や感情を伝達するための手段である言語において用いられる音。



無声音

息だけで生成される音。

有声音

声帯振動を伴って生成される音。



母音

呼気が口腔内において妨害を受けずに自然に流出して生成される音。

子音

呼気が口腔内において何らかの妨害を受けて生成される音。



音節

前後に切れ目があると感じられる音声上の単位。撥音(ん)は1音に節にカウントされない。

例)ブーメラン → ブー/メ/ラン = 3文節



モーラ

日本語のリズムの単位。

かな1文字がほぼそれに当たる。拗音、撥音、伸ばし棒もカウントされる。

例)ブーメラン →ブ/ー/メ/ラ/ン



アクセント

ある音において特定の音節やモーラが他の音より目立って聞こえる現象。



会話の公理

会話を成り立たせるためには、4つの約束があります。

  1. 質の定理(自分が嘘や偽りだと思っていること、確信をもてないことは言わない。)
  2. 量の公理(必要なことを必要な量だけ述べよ。)
  3. 関係の公理(その場の状況と関係のあることを述べよ。)
  4. 様態の公理(簡潔かつ明瞭に述べよ。)

また、前提条件の共有がとても重要です。今、誰と何について話しているのかを共有すること、お互いの立場や今話題になっているもの、相手が想起している内容の共有の上で正確なやりとりが可能になります。

まとめ

以上「STが最低限押さえておくべき言語学の知識」でした。