実習中にバイザーに「他部門に聞きたいことはある?」と聞かれて困ったことはありませんか?
判断できないことが多くて難しいと感じる人も多いのではないかと思います。
そこで他部門情報収集について解説します。
他部門情報は患者さまが総合的に効率よくきめ細やかな医療を受けるため、患者さまに関わる多職種が治療方針やゴール、情報を共有・把握することが目的です。
実際に他部門の方々にどんなことを質問したら良いのか、職種別にお伝えします。
職種名 | ポイント | 質問内容 |
医師(Dr.) | とても忙しいため、質問は簡潔に! | 【疾患】投薬状況、画像診断、予後予測 【リハビリ】中止基準、禁忌事項 【退院】ゴール、治療方針 |
看護師(Ns.) | 日によって受け持っている患者さまが異なる場合があるため、すべての情報を把握しているわけではない! | 【ADL】トイレや食事、更衣などの病棟での介助量 【自室での活動】解除の頻度、トラブル等 【退院】ゴール設定、看護方針 |
理学療法士(PT) 作業療法士(OT) | 可能であれば見学し勉強させていただきましょう! | 【ADL】歩行、トイレ動作、食事動作、更衣動作の動き 【高次脳機能】認知機能、注意機能、半側空間無視の影響 【退院】目標やそのに向けてどのような介入をしているのか |
社会福祉士(MSW) | 患者さまの入院中や退院後の生活をサポートしています! | 【退院先】病院や施設の情報 【経済状況】保険の種類など 【家族との関係】キーパーソン、介護への協力など |
ケアマネージャー 介護支援専門員 | 病院外のスタッフです!患者さまの退院後の生活を支えていきます。 | 【自宅情報】段差、手すり、家族の協力 【介護用品】装具、車椅子、靴などの購入情報 【サービス】デイサービスや訪問リハなどの利用状況 |
【Ns.】昼間は自身で歩行練習をするなど活動的に過ごす。入院時から現在まで、ナースコールを自身で押す様子は見られない。服薬の自己管理は困難。
【PT】訓練意欲は高いが病識の低下がある。ADLはおおむね自立するも、片脚立位でバランスを崩すため、立位での更衣や入浴動作に監視は必要。
【OT】現在は上肢の麻痺はほとんどなく、巧緻性にも問題がない。整容や座位での更衣、食事、日中の排泄は自立。
「⑥全体像」は、「③ 症例紹介」の中に含めてもOKです。
症例紹介の補足として全体像を簡潔に述べましょう。
意思表示はしっかりされている。時折、夕方から夜にかけて不安感が強くなり、気持ちの浮き沈みの激 しい一面がある。
検査結果から導き出される事実から考察し、信頼のできる文章を作成しましょう。
なぜそのような症状がでるのかを見分けるフェーズです。
また、実習での介入の場合は、入院中の患者さまに一時的に介入させていただく形になるため、自分の実施した検査を「STS実施検査・検査結果」として記載しましょう。
「⑦実施検査・検査結果」から検証結果をまとめ、統合したものを学術的に説明するフェーズです。
精神状態、コミュニケーション、言語機能、高次脳機能、呼吸発声機能、発声発語機能、口腔構音機能、摂食嚥下機能の9つの切り口から、検査結果を踏まえて状態を説明します。
【精神機能】意識は清明であるが見当識障害あり。【コミュニケーション】礼節保持。音声言語にて簡単な日常会話可能。【認知機能】日間差・日内差あり。 【言語機能】「聴く」は聴覚的把持力は 5 文節文まで 良好で、6 文節文も可能であるが十分ではない。「話す」は語の列挙が非常に困難であるが、日常会話は可能。「読む」は大きな問題なし。「書く」は氏名、日付け、単語の書字可能。 【高次脳機能】近似記憶、遠隔記憶、顕在記憶、作業記憶に障害が認められる。 【発話機能・発声発話機能】義歯が固定されていない場合は明瞭度に低下がみられる。【摂食嚥下機能】刻み食自力摂取可能。
国際生活分類(ICF)とは、2001年から使用が始まった「健康の構成要素に関する分類」という考え方です。
健康状態、心身機能・身体構造、活動、参加、環境因子、個人因子の、6つの枠組みから構成され、病院や施設などでは患者さまの全体像を捉える際に活用します。
このように図に示すとわかる通り、生活機能である「心身機能・構造」「活動」「参加」の各レベルや環境因子との間には相互作用があると考えるのが特徴です。
訓練を実施するときには、その患者さまに合わせた目標を設定しその目標を達成するための訓練を実施していきます。
ニーズやホープを採用した目標を立てることが患者様のベストですが、理想ではなく確実に到達できる目標を設定することが求められます。
状態により期間は異なりますが、短期目標と長期目標を立てます。
成人であれば、短期目標は1〜2週間、長期目標は1〜3ヶ月。小児であれば、短期目標は3ヶ月程度、長期目標は就学までとなる場合が多いです。
検査結果と本人の希望をもとに、客観的にみえる患者さまの言語聴覚士が訓練プログラムを作成します。
どのようなリハビリをどのくらいの期間を行うのか、どこまでいけばゴールなのかということを決め、本人やその家族に共有します。
また、症状があとから表出化することがあるため都度調整が必要となります。
報告する目的、症例の状態や症状の原因、どんな訓練を実施したのか、その結果どのような影響を及ぼしたのか、考えられること・見えてきたことを紐解いていくフェーズです。
他の症例や文献を、今回行った方法と結びつけて考察し、症例報告を書き上げていきます。
全体を要約した内容を記載するため最後に書くようにしましょう。
「タイトル」や「はじめに」は、症例報告の症例、考察、結論が一目で分かるよう具体的かつ簡潔に記載します。以下は「はじめに」の例です。
この度、回復期病院にて重度くも膜下出血を発症した症例に対し、評価・訓練を行う機会を得た。注意機能の向上と衝動性の抑制の訓練を実施したため、以下に考察を交えて報告する。
今回、左視床梗塞と既往の認知症により記憶障害を主とする高次脳機能障害を呈した症例の評価、訓練を行う機会を得た。症例は高齢であることに加え、既往の認知症、心不全により心身両面に配慮を要した。心不全が悪化し、リハビリテーションの実施基準や条件が厳しくなる中で、いかに評価、訓練を行い、症例の生活を支援できるかを模索、検討したため以下に報告する。
以上、「症例報告を作るには?簡潔にまとめるコツ」でした。
研修にご協力いただいている患者さまに全力で向き合い、自分の経験をぎゅっとまとめた、宝物のような症例報告を作成しましょう!
【医学的診断名】中大動脈瘤破裂によるくも膜下出血【現病歴】20XX年Y月X日頃、職場で突然の頭痛と吐き気に襲われ、嘔吐を繰り返しながら倒れた。搬送先のA病院にて右前頭葉血種を伴う重度くも膜下出血と診断。緊急でクリッピング術と減圧開頭手術を行い、頭蓋形成術をX日+15日に行った。X日+85日、さらなるリハビリのためB病院の回復期病棟へ転入院。【言語病理学的診断名】ディサースリア【神経学的所見】左顔面神経麻痺、左舌下神経麻痺【神経心理学的所見】注意障害、遂行機能障害、ワーキングメモリの障害、構成障害、感情失禁【合併症】てんかん重積発作