学生のための症例報告の書き方 ①



症例報告(ケースレポート)とは、

患者の疾患の症状や疾病の

兆候、診断、治療、経過観察などに関する詳細報告です。



学生の場合は実習のときに

見学や介入させていただいた

患者さまについての報告となる場合が多いです。



この記事では、「症例報告」に

具体的にどのようなことを書くのか、

どんな情報が必要なのかを

例を用いながらお伝えしますね!





研修にご協力いただいている患者さまとじっくり向き合い、



自分の経験をぎゅっとまとめた、宝物のような報告書を作ってくださいね。





ツキノ

学生のとき、ツキノは「症例報告書」を作成している最中、大切なものを作っているということを理解していませんでした。しかし、卒業し就職してから読み返したときに自分の財産になっていることに気づきました。





症例報告書の全体の流れ

症例報告書は、以下のような流れで書かれることが多いです。



  1. タイトル・所属・名前
  2. はじめに
  3. 症例紹介
  4. 医学的診断名
  5. 他部門情報
  6. 全体像
  7. 実施検査・検査結果
  8. 統合と解釈
  9. 国際生活機能分類(ICF)
  10. 訓練目標・訓練内容
  11. 考察
  12. おわりに・謝辞・参考文献




ツキノ

これは、”絶対”ではないから注意してくださいね。

実習先のバイザーや学校の指示に従って作成してください!



① タイトル・所属・名前

症例報告書を書くときには、

読み手に伝わる文章を書かなければなりません。



最初に読み手の目に入るのはタイトルです。



そのタイトルで興味を引くことができれば、

読み手は内容を読み進めていくでしょう。





そのため、タイトルは、

本文のすべての項目を書き終わってから作成すると、

本文と対応するタイトルを作りやすいです。



タイトルは、

症例報告の症例、考察、結論が

一目で分かるよう具体的かつ簡潔に記載します。





例 1

脳梗塞により感覚性失語を呈した症例

例 2

リハビリテーションの基準が徐々に制限される中で可能な支援を模索し続けた一例



ツキノ

タイトルを考えれば考えるほど、自分が何を書いたのかよくわからなくなる現象ありませんか?

そんなときはひと休憩したり、別の日に落ち着いて考えると、焦らず向き合えたりするので、試してみてください。

ツキノの場合は、伝えたい内容がたくさんありすぎて、頭の中がしっちゃかめっちゃかして、簡潔にっていうのが難しかったです。





② はじめに

こちらも最初に取り掛かってしまいがちですが

「はじめに」も

全体を要約した内容を記載するため

最後に書くようにしましょう。



例は記載しますが、

あくまでも”最後”に作成してくださいね。





例 1

 この度、回復期病院にて重度くも膜下出血を発症した症例に対し、評価・訓練を行う機会を得た。注意機能の向上と衝動性の抑制の訓練を実施したため、以下に考察を交えて報告する。

例 2

 今回、左視床梗塞と既往の認知症により記憶障害を主とする高次脳機能障害を呈した症例の評価、訓練を行う機会を得た。症例は高齢であることに加え、既往の認知症、心不全により心身両面に配慮を要した。心不全が悪化し、リハビリテーションの実施基準や条件が厳しくなる中で、いかに評価、訓練を行い、症例の生活を支援できるかを模索、検討したため以下に報告する。

ツキノ

タイトルを考えれば考えるほど、自分が何を書いたのかよくわからなくなる現象ありませんか?

そんなときはひと休憩したり、別の日に落ち着いて考えると、焦らず向き合えたりするので、試してみてください。

ツキノの場合は、伝えたい内容がたくさんありすぎて、頭の中がしっちゃかめっちゃかして、簡潔にっていうのが難しかったです。





③ 症例紹介

症例紹介は、読み手に人物像が伝わるように書きましょう。

記載する内容は以下の通りです。



  • 年齢
  • 性別
  • 利き手
  • 使用手
  • 身長
  • 体重
  • BMI
  • 要介護認定
  • 既往歴
  • 家族構成
  • キーパーソン(KP)
  • 主訴
  • 趣味・特技
  • 休みの日にしていること
  • 好きなもの
  • その他・備考


等、

症例の特徴となる項目の内容は記載すると、

読み手がよりリアルに症例の患者像を想像することができます。



【年齢】●●代【性別】女性・男性【利き手】右手・左手 【使用手】右手・左手【要介護認定】なし・再申請中・要介護●級取得済み【家族構成】既婚・独身/家族同居・独居/娘夫婦が隣の市に居住 等【KP】●●【主訴】●●●●【趣味・好きなもの】●●●●【備考】フリーハンド歩行・杖使用・車椅子使用・ベッドサイドにて介入 等




ツキノ

項目すべてを記載する必要はありませんし、項目にないものでも記載することはOKですよ!





④ 医学的診断名

「医学的診断名」と

一言でまとめられていますが

記載すべき項目は複数あります。



  • 医学的診断名
  • 言語病理学診断名
  • 神経学的所見
  • 既往歴/合併症
  • 現病歴


これらはDr.のカルテなどに記載されます。

そのため、バイザーに相談し、

情報を手に入れましょう。



例 1

【医学的診断名】左視床外側急性期脳梗塞 【言語病理学的診断名】高次脳機能障害 【神経学的所見】左片麻痺・左顔面神経麻痺 【既往歴・合併症】高血圧
【現病歴】X 年 Y 月 Z 日、本症例の様子を見に来た 息子が本症例の右上肢の脱力、右顔面神経麻痺、呂律障害を確認し、A 病院へ救急搬送される。MRI にて 左視床外側に脳梗塞を認め、保存的治療がされる。Z+15 日リハビリテーション目的で当院入院。

例 2

【医学的診断名】中大動脈瘤破裂によるくも膜下出血【現病歴】20XX年Y月X日頃、職場で突然の頭痛と吐き気に襲われ、嘔吐を繰り返しながら倒れた。搬送先のA病院にて右前頭葉血種を伴う重度くも膜下出血と診断。緊急でクリッピング術と減圧開頭手術を行い、頭蓋形成術をX日+15日に行った。X日+85日、さらなるリハビリのためB病院の回復期病棟へ転入院。【言語病理学的診断名】ディサースリア【神経学的所見】左顔面神経麻痺、左舌下神経麻痺【神経心理学的所見】注意障害、遂行機能障害、ワーキングメモリの障害、構成障害、感情失禁【合併症】てんかん重積発作



ツキノ

症例については別の記事にまとめますね!





⑤ 他部門情報

実習中にバイザーに

「他部門に聞きたいことはある?」などと

聞かれたことはないでしょうか??



 何を聞けばいいのかよくわからない

 こんなことを聞いたら非常識?

 誰に聞けばいいの?

きっと判断できないことが多くて

難しいと感じる人も

多いのではないかと思います。



そこで

他部門情報収集について

軽く説明しつつ、

どんな内容を記載するのかお伝えしますね。





他部門情報を収集する目的

他部門情報は

患者さまが総合的に効率よく

きめ細やかな医療を受けるため、

患者さまに関わる多職種が

治療方針やゴール、情報を共有することが目的です。





きちんと共有できていないと、

現場も患者さまも混乱してしまう可能性があります。



 Ns:離床時間を増やして夜間覚醒を予防したい

 リハビリ:疲労がみられるから介入と介入の間はベッド臥床で待機していただく



このような正反対の方針で介入してしまうと

患者さまは起きたり寝たり起きたり寝たり、

それこそ疲れ果てて

リハビリどころじゃなくなってしまう可能性も・・・



このようなすれ違いを防ぎ、

患者さまに最大限の医療を

提供することが重要です。





質問すべきこと

どんなことを質問したら良いのか、

職種別にお伝えしますね。



医師(Dr.)

とても忙しいため、質問は簡潔に!

【疾患】投薬状況、画像診断、予後予測

【リハビリ】中止基準、禁忌事項

【退院】ゴール、治療方針





看護師(Ns.)

日によって

受け持っている患者さまが異なる場合があるため、

すべての情報を把握しているわけではないことを

頭に入れておきましょう。

【ADL】トイレや食事、更衣などの病棟での介助量

【自室での活動】解除の頻度、トラブル等

【退院】ゴール設定、看護方針





理学療法士(PT)・作業療法士(OT)

STの学生であれば、

PTやOTの見学もお願いし、

可能であれば、どのような介入をしているか

勉強させていただきましょう。

【ADL】歩行、トイレ動作、食事動作、更衣動作の動き

【高次脳機能】認知機能、注意機能、半側空間無視の影響

【退院】目標やそのに向けてどのような介入をしているのか





社会福祉士(MSW)

社会福祉士=メディカルソーシャルワーカー=MSWは

患者さまの入院中や退院後の生活をサポートします。

【退院先】病院や施設の情報

【経済状況】保険の種類など

【家族との関係】キーパーソン、介護への協力など





ケアマネージャー・介護支援専門員(ケアマネ)

病院外のスタッフとなります。

もし症例の患者さまに

ケアマネがついているようであれば、

情報を得られるかもしれません。

バイザーに相談してみましょう。

【自宅情報】段差、手すり、家族の協力

【介護用品】装具、車椅子、靴などの購入情報

【サービス】デイサービスや訪問リハなどの利用状況





ツキノ

聴く人が多すぎて、これはこれでちょっと混乱でしょうか。

実際に記載する場合の例を示しますので参考にしてみてください!





【Ns.】昼間は自身で歩行練習をするなど活動的に過ごす。入院時から現在まで、ナースコールを自身で押す様子は見られない。服薬の自己管理は困難。

【PT】訓練意欲は高いが病識の低下がある。ADLはおおむね自立するも、片脚立位でバランスを崩すため、立位での更衣や入浴動作に監視は必要。

【OT】現在は上肢の麻痺はほとんどなく、巧緻性にも問題がない。整容や座位での更衣、食事、日中の排泄は自立。





⑥ 全体像

「③ 症例紹介」の中に含めてもOKな項目です。

症例の患者さまについて③の補足として全体像を簡潔に述べましょう。



意思表示はしっかりされている。時折、夕方から夜にかけて不安感が強くなり、気持ちの浮き沈みの激 しい一面がある。





⑦ 実施検査・検査結果

実習での介入の場合は、

入院中の患者さまに

一時的に介入させていただく形になるため、

自分の実施した検査を

「STS実施検査・検査結果」として記載しましょう。



① スクリーニング検査(Z+38〜41日):見当識障害、記憶障害、構成障害の疑いあり

② MWST(Z+30日):5

③ RSST(Z+30日):3回/30秒

④ MMSE:12点

⑤ SLTA:語想起障害あり。詳細別紙参照。



ツキノ

STSは、STの学生のことです!

また「Z+30日」とは、発症日をX年Y月Z日としたときに30日経過している、ということを表しています。





⑧ 統合と解釈

⑦で実施した検査と結果から

どういう解釈をしたのか記載します。



項目としては、以下の通りです。

  • 精神機能
  • コミュニケーション
  • 言語機能
  • 高次脳機能
  • 呼吸発声機能
  • 発声発語機能
  • 口腔構音機能
  • 摂食嚥下機能


患者さまに合わせて記載内容を抜粋しながら書きましょう。



【精神機能】意識は清明であるが見当識障害あり。【コミュニケーション】礼節保持。音声言語にて簡単な日常会話可能。【認知機能】日間差・日内差あり。 【言語機能】「聴く」は聴覚的把持力は 5 文節文まで 良好で、6 文節文も可能であるが十分ではない。「話す」は語の列挙が非常に困難であるが、日常会話は可能。「読む」は大きな問題なし。「書く」は氏名、日付け、単語の書字可能。 【高次脳機能】近似記憶、遠隔記憶、顕在記憶、作業記憶に障害が認められる。 【発話機能・発声発話機能】義歯が固定されていない場合は明瞭度に低下がみられる。【摂食嚥下機能】刻み食自力摂取可能。





ツキノ

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

長くなってしまうので、この続きは、また別の記事にします。

引き続きよろしくお願いします。