言葉の発達は「1つずつ階段を登ること」が大切なワケ



ことばが遅れてるかも…

意味のあることばが出てこない…



このページにたどり着いた方の中で、このような悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないかと思います。この記事では、その悩みやぐるぐるしている不安を解消することを目的に、ことばの発達の段階について解説していきます。

ただし、ここで注意していただきたいことは、発達には個人差があるということです。

好き嫌い、得意不得意、性格等、大人でも個人差ってありますよね。赤ちゃんや子どもも同じです。そのため、この記事の内容は、「絶対」ではなく「目安」として読んでいただけますと幸いです。

言語発達の階段

ことばの発達は、順番があり、それはいくつかの段階に分けることができます。

段階は、諸説ありますが、本サイトでは以下のようにまとめます。順番を飛ばして先に進むことは難しく、きちんと1段ずつ積み上げていくことが大切です。

  1. 前言語期(0歳〜1歳)
  2. 単語期(1歳〜1歳半)
  3. 語から文への移行期(1歳半〜2歳半)
  4. 文の形成期(2歳半〜4歳)
  5. 文章構成期(4歳〜6歳)
ツキノ

心理学などを学んでいる方はご存知かと思いますが、立場や考え方の違う様々な偉い人達が多くの説を唱えています。興味のある方は調べてみると面白いと思います。



では、この段階をひとつひとつ見ていきましょう。



前言語期(0歳〜1歳)

前言語期は、初語が出現するまでの期間です。

コミュニケーションのツールは、視線発声身振りが主です。

愛着に基づいた、他者(養育者)の気持ちや感覚を自然に読み取る能力(対面的相互行為)から、【赤ちゃん】と【他者(養育者)】が【注意を共有する対象(おもちゃなど)】を通して気持ちや感覚を共有する行為(三項的相互行為)を形成してます。

この段階では、赤ちゃんに「コミュニケーションは面白い」と感じてもらい、興味をもってもらうことが大切です。

前言語期の目標
  • 象徴機能の形成
  • 言語コミュニケーションの発達の基盤づくり

0〜2ヶ月 新生児期 「追視、発声、身振り」

この期間にみられる反応は以下の通りです。

  • 人の話しかけの抑揚に合わせて自分の身体を動かす:相互同期性
  • 母親の声を好む(母>女性>父)
  • 目の前のモノをじっと見つめて、動くと追いかける:追視(1ヶ月ごろ)
  • 音がする方向に顔を向ける(1ヶ月ごろ)
  • 手を開く(2ヶ月ごろ)
  • 反射的なほほえみ:生理的微笑(3ヶ月ごろ)
  • 第一次間主性


マザリーズ

養育者、特に母親は、赤ちゃんに向かって優しくゆっくりとした抑揚のある高めの声掛けを自然に行います。これをマザリーズと言います。

マザリーズは、赤ちゃんを快の気持ちにさせ、心を通じ合わせることでことばの発達の土台を作る大切なツールです。

「ちょっと恥ずかしいな」「やり方がわからないな」と心配や不安があるかもしれませんが、無理のない程度に「優しく、ゆっくり、抑揚のある、高めの声」を意識して赤ちゃんにたくさん話しかけてみてください。

第一次主観性

意味のあることばが介在しない直観的で、即時的な相手との間の意識のやり取りのことを指します。

赤ちゃんは、あやされると「あーうー」などと反応します。これは自分が注目され、相手が関わりを持とうとしていることを感じ取るためとされています。

このようなやり取りを通して敏感に養育者の心の世界を感知していきます。

2〜3ヶ月 乳児期 「クーイングと笑い声の持続」

この期間にみられる反応は以下の通りです。

  • 発声(クーイング)、共鳴動作が出始める(2ヶ月ごろ)
  • 原会話(2ヶ月ごろ)
  • 色覚が発達してくる
  • 社会的微笑(3ヶ月ごろ)


原会話

親と乳児が注意をお互いに向け合う社会的相互作用のことです。ハンドリーガードやターンテーキングがみられます。

対面状態で行われることが多く、見つめること、触れること、発声することが関わり基本的な情動を表現し共有するのに役立ちます。

また、原会話は明瞭な順番交代(ターンテーキング)の構造をもっています。

ツキノ

原会話は、言語習得の基盤になるものです!でも、嫌なときには継続しないものです。快・不快、で言うと、「快」なのです。



3〜6ヶ月 乳児期 「クーイングと喃語の移行期」

この期間にみられる反応は以下の通りです。

  • 首がすわる:定頸(3ヶ月ごろ)
  • 顔に布をかけられて深いを示す:顔布かけテスト
  • 規則性や驚きを楽しむコミュニケーション:いないいないばあ
  • 親しい人だけでなく周りの環境にも興味を示し始める:プリヘンジョン(手を伸ばす)
  • 3次元的な空間を認知
  • 物の永続性を獲得:注視(物を見続けることができる)
  • 人見知り
  • ビスケットなどを自分で持って食べる(5ヶ月ごろ)
  • 鏡に写った自分の顔に反応する(5ヶ月ごろ)
  • 喃語(6〜8ヶ月ごろ)
  • 共同注意の萌芽
  • 歯が生え始める(7ヶ月ごろ)
  • 独坐(8ヶ月ごろ)
ツキノ

視力の発達に伴って、母親以外の他人の判別が可能になり、人見知りがスタートします。:カテゴリー化



8〜12ヶ月 乳児期 「子どもからのコミュニケーションの始まり」

この期間にみられる反応は以下の通りです。

  • 母親の表情から察したりする:社会的参照(9ヶ月ごろ)
  • 独坐(8ヶ月ごろ)
  • ハイハイ(9ヶ月ごろ)
  • 追随凝視
  • 物のやりとり
  • 他者の注意を引き付ける行為
  • 手さし、指さしの萌芽
  • 称賛や承認を求める
  • 共同注意三項関係の成立=指さし(要求を間接的に伝えられる)
  • 第二次間主観性
  • ある物を別のものに置き換えて遊ぶ:象徴遊び
  • ハイハイ
  • 初語(10ヶ月ごろ)

三項関係

三項関係は、本人と他者との間に物が媒介されるコミュニケーションの形態のことです。「本人ー言葉(対象)ー他者」という言語的コミュニケーションの基礎となります。急にできるようになるのではなく、三項関係の成立にも順序があります。

要求の指さし(10ヶ月ごろ)

「指さし」の意味について理解し始め、大人の指さした方向や視線の方向を追って、同じ方向を見ることができるようになってきます。

また、自分の欲しいものを指差しで相手に知らせることができるようになってきます。(=二項関係の成立・二項対立)このように、注意を向ける対象を大人と赤ちゃんで共有できることを「共同注意」と呼びます。

叙述の指さし(12ヶ月ごろ)

赤ちゃんが、何かを見つけたときに「人」に「伝えたい」と感じ、指差し、振り返る等をするようになります。(三項関係のはじまり)

応答の指さし(18ヶ月ごろ)

「〜はどれ?」に応じて指差しして答えることができるようになります。答える対象が目の前になくてもその方向を指さします。(三項関係の成立)

ツキノ

共同注意については、9ヶ月以前は親が子どもの視点に合わせて共同注意が成立するのに対し、9ヶ月以降は子どもが親の視点に気づき、注意を向け確認したりできるようになってきます。

第二次間主観性

相手の意図を共有しながら人との関わりと物との関わりを統合させ、物を人とのコミュニケーションの中に取りこみだします。

単語期(1歳〜1歳半)

単語レベルで意味のあることばが出現してくる段階です。脳も発達し、 物には名前があることを少しずつ理解し始め、発達が早い子どもでは10ヶ月頃になると、身の回りの簡単な単語を口にするようになります。また、「もっと」「だっこ」など、欲求も言葉で伝えるようになっていきます。

単語期の目標
  • 言葉を知ること
  • 表現することが楽しいと思うようになること


語から文への移行期(1歳半〜2歳半)

語の羅列、パターン化した句や文表現の段階です。「ママ、だっこ」「わんわん、きた」など、単語を組み合わせて、徐々に長い文章を話すようになります。話せる言葉が増えたり、二語文で話せるようになると、周囲とコミュニケーションを取りやすくなります。また、意思を伝えるのもうまくなる時期です。

語から文への移行期の目標
  • 簡単な日常会話が成立する(二語文)
  • 語彙を増やす
ツキノ

語連鎖や助詞が出現し始めます。



文の形成期(2歳半〜4歳)

2歳から3歳の間に単語の数が増え、3歳から4歳頃の間には述語や代名詞、助詞などの文法を使うようになります。また、自分から大人の話を聞くようになり、意味を理解しようとする意識が芽生えたり、「これなに?」「なんで?」などの質問が多くなります。

文の形成期の目標
  • 口頭言語の水準を高める
  • 文を作成する
ツキノ

会話が活発になる2〜3歳で吃音が発見されやすくなります。もしも気になる場合は専門機関に早めにご相談してみてくださいね。



文章構成期(4歳〜6歳)

複雑な文の構造、書記言語学習、談話理解の精緻化の段階です。文章構成期で獲得される機能は以下の内容となります。

文の構成期でポイントとなる点
  • 文レベルの理解を深める
  • 文章を語る
  • 就学に向けての準備(行動のコントロール、学習意欲の形成、数概念の形成)
ツキノ

ここまでに「読み・書き」ができなくても大丈夫。焦らないでくださいね。「話す→読む→書く」の順で獲得していきます。まずは「話す」が大切です。



「遊び」から見る言語発達

第1段階(0〜1歳)

周囲の人たちの真似から始まり、1歳半ごろから「見立て遊び」を始めます。

見立て遊びとは、実際に目の前には存在しないものを、頭の中で別のものに見立てて、想像しながら行う遊びのことです。

事物はそのままの形で、子どもの身体運動遊びの対象となります。

例えば、リンゴのおもちゃを「いただきます」と言って食べる真似をしたり、車のおもちゃを走らせたりということが挙げられます。ジェスチャーが重要な役割を果たします。



第2段階(2〜3歳)

2歳すぎると真似事から想像力を膨らませた遊び方に変化し「象徴遊び」を始めます。事物は別の物事の対象となります。

子どもの関心は、象徴されているものや、その行動活動に注がれます。

例えば、積み木を電話にしたり、落ち葉を食べ物にしたりということが挙げられます。また、「象徴遊び」と「見立て遊び」を組み合わせ、「ごっこ遊び」が行われるようになり、遊びに流れや物語性が出現します。

第3段階(4歳〜)

「ごっこ遊び」がより活発になり、遅延模倣や内面世界(イメージ、表象)の形成や象徴機能が獲得され、単純で決まり切った日常生活の手順や行動系列、出来事の筋書き(スクリプト)の一部を利用します。

また、事物はそれを媒介として対人活動が行われるものとなり、言葉が重要な役割を果たします。

第4段階(5歳〜)

事物は遊びの中で純粋に記号となるか、さもなければ不必要となり、実際にモノがなくても遊ぶことができるようになります。

さいごに

ざーっとお話しましたが、一番大切なのは、赤ちゃんひとりひとりペースが違う、ということです。

赤ちゃんの言語発達を促すには、周囲の方々が、赤ちゃんの反応の真似をする、話しかける、反応するなど、赤ちゃんに合わせた反応を示していくことが必要です。

この記事を読んで、「全部完璧にやれ!」ということではなく、頭の片隅で「あ、今この段階なんだ!」と赤ちゃんの成長を感じていただけたら幸いです。